ヒートブリッジで最初に出るのはカビではなく錆|断熱できない現場の現実解
2025/12/21
黒カビが出ていなくても、問題は始まっています
前回(12/20)の記事では、
「エアコンを上げても寒い部屋」
「夏は冷えず、冬は結露する部屋」
についてお話しました。
今回は、その続きです。
結論から言うと、
黒カビが見えてからでは遅いケースが多い
ということ。
実際の現場では、
カビが目立つ前に、
すでに別のサインが出ています。
ヒートブリッジで最初に現れる「オレンジ色の跡」
築年数の経ったマンションや団地でよく見られるのが、
天井と壁の取り合い、梁下などに出る
オレンジ色の点状跡です。
これは汚れではありません。
結露した水分によって金属部(ビスなど)が錆びた痕跡です。
つまり、
・外壁側
・梁
・梁下壁
・天井
といった 冷えやすい場所 で、
ヒートブリッジによる結露が
すでに繰り返し起きている証拠です。
📷写真は、クローゼット内のヒートブリッジです。
写真左上に見えるのがビスの錆び(オレンジ色)によるもの。
カビではありません。
【ヒートブリッジとは】
建物の断熱材で覆われていない、熱を伝えやすい部分(柱・梁・床スラブなど)を指し、
そこから熱が逃げたり(冬)、熱が侵入したり(夏)する現象です。
冬は壁内の冷えでビスや釘が冷え、室内の暖かい空気と接触することで、
結露を発生させ、錆やカビを発生させる原因となります。
断熱材が入っていても結露が止まらない理由
「断熱材が入っているなら大丈夫では?」
そう思われる方も多いと思います。
しかし、実際に壁を一部くり抜いて確認すると、
断熱材は入っているものの、
厚みは約30mm前後 でした。
この厚みでは、
・表面温度はほとんど変わらない
・湿気は簡単に通過する
・冷えたコンクリートに到達する
結果として、
断熱材の裏側で結露が起きる
という状態になります。
これは
「断熱不足」というより、
断熱設計が成立していない状態 です。
📷写真は、断熱材の厚み(くり抜いてチェックしました)
剥がれ落ちかけている石膏ボード下地は、長年の結露で
劣化し断熱材から剥がれかかっていました。
断熱材の裏と、壁紙下地で起きていたこと
断熱材を撤去して確認すると、
その奥のコンクリート躯体にはカビの痕跡が見られました。
さらに問題なのは、
壁紙下地そのものが結露し、劣化とカビが同時に進行していた
という点です。
壁紙下地(石膏ボードや合板)は、
・吸湿しやすい
・乾きにくい
・湿気で強度が落ちる
という性質があります。
そこに結露が起きれば、
カビだけでなく材料そのものの寿命を縮めます。
撤去後、目立つカビが無かった理由
断熱材を撤去し、防カビ工事を行った後、
コンクリート下地の表面には
目立った黒カビは見られませんでした。
これは、
・結露が無かった
・問題が軽かった
という意味ではありません。
断熱材や下地を撤去する過程で、
表層に付着していた初期段階のカビが
一緒に剥がれ落ちることは、現場ではよくあります。
結露による劣化と湿気があった事実は、
変わりません。
📷写真は、剥がれかかった断熱材付き石膏ボード下地を剥がし、
コンクリート下地に防カビ工事を施しています。
一部カビが残っているように見えますが、執拗に防カビ工事を
行っていますので、セミの抜け殻状態になっているとご理解
いただければと思います。
なぜカビ臭が消えないのか(MVOCsの話)
このような状態で多いのが、
黒カビが見えないのに、カビ臭が残る という相談です。
原因は、
・断熱材裏
・壁紙下地
・コンクリート表面
で発生したカビや微生物が出す
**MVOCs(カビ由来揮発性有機化合物)**です。
表面だけをきれいにしても、
・臭いが消えない
・再発が早い
というケースが多いのは、
発生源が内部に残っている からです。
📷写真は、剥がれかかった「断熱材付き石膏ボード下地」を
剥がし、防カビ工事した後に断熱付き石膏ボードを復旧し、
壁紙張りを行っています。
ですが、環境自体が変わりません ので、経年劣化すればカビ
が繁殖しやすくなる可能性 は否定できません。
断熱できない現場での現実的な判断
断熱を本気で効かせるには、
・断熱材35mm以上
・石膏ボード12.5mm
・合計で約47.5mm以上
の構成厚が必要になります。
しかし、築古マンションや団地では、
・天井高
・梁・柱型
・管理規約
・工期・費用
の関係で、
現実的に難しい現場がほとんど です。
その場合の現実解は、
・下地を確認・必要に応じて交換
・カビ取り
・殺菌消毒
・防カビ施工
・結露対策を前提とした仕上げ
という
防カビ結露対策工事 になります。
まとめ|見えない段階で止めるという考え方
ヒートブリッジによる結露は、
黒カビが出る前から始まっています。
・オレンジ色の錆
・結露による下地劣化
・原因不明のカビ臭
これらは、すべて 初期サイン です。
見た目がきれいなうちに、
内部で起きていることを正しく判断し、
現象が大きくなる前に止める。
それが、
住まいと健康を守るための
一番現実的な考え方だと、プレモは考えています。
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