漏水事故後の防カビ工事が“余計なこと”とされる理由と、本当の意味
2025/10/21
はじめに──「余計なこと」とされる工事
漏水事故後の現場では、しばしばこんな言葉を耳にします。
「解体して乾かしたからもう大丈夫」「防カビ工事なんて余計なこと」――。
しかし、プレモが見てきた現場の多くでは、
“乾いたように見えても” 壁の内部・床下・木部の中には、
湿気と胞子が確実に残っています。
保険会社や管理会社の視点では「見た目が戻れば完了」ですが、
専門業者の視点からすれば、それは 表面だけの治療にすぎません。
建物は呼吸し、カビは見えないところで再発を待っています。
「乾いた=安心」ではない理由
漏水事故後の復旧作業は、通常、解体と乾燥を中心に行われます。
しかし、コンクリートや木材、石膏ボードなどの多層構造では、
内部に吸い込まれた湿気が完全には抜けません。
乾いたように見えても、湿度の高い部分では菌糸が残り、
再び空気が循環するとカビ臭や変色が現れます。
つまり、防カビ工事とは“余計なこと”ではなく、
内部に残る微生物を封じる最後の防衛線なのです。
木造住宅におけるカビ再発の実態
木造住宅では、柱・根太・下地板といった木部が湿気を吸う性質を持ちます。
24時間以上の湿潤でカビ発芽条件を満たし、
乾燥後も胞子が生き残ることが確認されています。
特に、漏水後に「見た目が乾いたから」といって
防カビ工事を省略した現場では、
数か月後に黒カビの再発やカビ臭の戻りが発生するケースが後を絶ちません。
木材は本来、呼吸する建材です。
しかし、過度なカビ取り──特に強い薬剤や過剰な研磨──は、
木材表面の繊維を傷め、呼吸性を奪う結果につながります。
集成材も同様で、表面を削りすぎれば接着層が露出し、
調湿性が低下して内部に湿気がこもりやすくなります。
つまり、「除去すればするほど再発しやすくなる」という逆効果。
防カビ工事の目的は、傷めて取り除くことではなく、守って再生させること。
木材の呼吸を残したまま、殺菌消毒と防カビ施工で“呼吸しながら守る”ことが、
プレモが考える“正しい木材の扱い方”です。
現場で見た“余計なこと扱い”の背景
防カビ工事が軽視される背景には、業界構造の問題があります。
・保険:乾燥までが補償範囲
・管理会社:見た目重視の完了判断
・施工会社:薬剤使用によるリスク回避
・職人:マスクも手袋もせず、カビを手で払う現場慣習
実際の現場では、「乾燥を待てない」という施主や元請けの声も多く、防カビ工事を途中で打ち切らざるを得ないこともあります。
かつて雨漏り被害を受けた木造現場で、防カビ工事を行った際、木部の含水率が高く、防カビ剤がうまく浸透しませんでした。
その後、再び雨漏りが起き、カビが再繁殖。
仕方なく、開発会社の協力を得て「別の防カビ剤」で対応しましたが、お客様が乾燥を待たずに工程を急いだため、十分な効果は得られませんでした。
※浸透し、乾燥させ、防カビ効果をもたせる意味をお客様はご存じありません。
これでは良い防カビ工事はできません。
防カビ工事は「時間」と「環境」を整えなければ成立しません。
どんなに良い薬剤でも、湿った木部には浸透しない。
現場で求められるのは、薬剤の強さではなく、待つ勇気と理解ある施工体制です。
【難しい木材防カビ工事】
木材などに防カビ工事すると通常の水溶性薬剤が浸透してくれません。
通常の防カビ剤では無理があります。黒カビに特化したもう1つの防カビ剤で表面に膜を張り、内部に少しずつ浸透させる方法で対応したのが📷写真になりますが、結露や湿気の多い場所には不向きでもあります。
木材の防カビ工事は簡単ではありません。
新築陸屋根住宅での雨漏り被害
印象的だったのは、新築の戸建住宅(陸屋根)で発生した雨漏り事例です。
排水のわずかな詰まりから天井内に水が回り、二階全体が一晩でカビ被害を受けました。
新築のため内装は新品、建築会社も状況を把握できず、現場に到着したときには壁紙の裏から黒カビが広範囲に繁殖していました。
家を建てた建築会社の担当者は青ざめ、「まさか新築で…」と繰り返していたのを今でも覚えています。
なのに、現場では「すぐ終わるだろう」「乾いたように見えるから大丈夫」という安易な発想がいまだに残っています。
この言葉をお客様にそのまま伝えることで、「時間がかからない=施工を待てない」という誤った認識が生まれます。
すべての根本は、建築会社の説明責任不足と、同じ箇所で雨漏りを二度発生させた施工管理の甘さにあります。
被害を拡大させたのは雨そのものではなく、“説明しない体質”と“早く終わらせたい心理”です。
また、新築の場合は木材がまだ若く、水分を多く含む「生木」状態。
垂木や梁なども水をはじきやすいため、防カビ剤を塗布しても浸透しきらず、効果が現れにくいことがあります。
この状態で焦って仕上げれば、見た目は整っても内部では菌糸が残り、時間差でカビが再発する──それが現場の真実です。
技術補足:薬剤選定と限界
1回目の施工の際、木部の含水率が高く、防カビ剤がまったく浸透してくれませんでした。
そのとき心から思ったのは、
「浸透しないなら、表面にバリアを張るような薬剤があれば」ということでした。
そこで行きついたのが、もう1つの防カビ剤です。
現在では、左官天井や左官壁に使用しています。
ただし、この薬剤は黒カビには一定の効果を示すものの、その他の菌類には効果が限定的で、長期間の持続性も期待できません。
特に、雨漏りや漏水直後・結露直後の湿潤木材や合板には使用厳禁です。
水分が多い状態では薬剤が化学的に安定せず、表面反応が途中で止まるため、防カビ被膜としての性能が維持できません。※防カビ剤が浸透し乾燥するまで時間がかかります。
雨漏りや漏水事故を繰り返して発生させるような状況では、どんな防カビ工事を行っても、すべてを洗い流してしまいますので無意味になります。
結果的に、防カビ工事は“薬剤選び”も大切ですが、乾燥と浸透環境の確保が非常に重要であると痛感しました。
防カビ工事は“見えない仕上げ”
防カビ工事の目的は、衛生面だけではありません。
木材や合板、さらに建材には防カビ効果がありません。
そのため、条件が整うとカビの被害にあってしまいます。
防カビ工事は、見た目の不衛生さを解消し、カビに強い建材にすることです。
建材をカビの再感染から守ることはとても重要です。
乾燥や清掃だけでは止められない真菌を封じ、健康被害や臭気の再発を防ぐ“化学的防壁”。
これが、プレモが一貫して行ってきた
「カビ取り→殺菌消毒→防カビ施工」という三段階の意味です。
まとめ──「余計なこと」ではなく「本当の復旧」
防カビ工事は、余計なことではない。
むしろ“見えないところを守る”ための最も大切な工程。
乾かしたから安心、見た目が戻ったから終わり――
そんな考えが、再発と健康被害を呼び寄せます。
防カビ工事とは、建物の健康寿命を延ばすための最終工程。
それを理解してもらうことが、専門業者プレモの使命です。
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